「中国では、餃子といえば水餃子。焼き餃子はほとんど食べない」
誰しも一度は聞いたことがある雑学かもしれません。人によってはこれまでに何度も聞いたことがあって「ハイハイ知ってる知ってる」状態になっている人も多いのではないでしょうか。
ともかく日本では、餃子といえばイコール焼き餃子です。焼き餃子にはファンも多いし「焼き色がどうこう」「羽根がどうこう」「肉汁がどうこう」といった餃子談義には、誰しも参加できるのではないでしょうか。
しかし、水餃子について熱く語る人はほとんどいません。日本において水餃子は「ああ…まぁ、そういうのもあるよね」くらいの存在感の食べ物となっています。
なぜ日本では、こんなにも水餃子が不遇の扱いを受けているのでしょうか。なぜ、焼き餃子ばかりが偏愛されているのでしょうか。
この理由についてはいくつかの説があり、例えば「日本人は焼いたときの香ばしい香りを好むから」とか「白米+おかずという食文化に合ったから」といったものがあります。
しかし僕としては、水餃子が不遇の扱いを受けている理由はただ一つ。「まだ水餃子の魅力が世の中に知られていない」という一点だけではないかと思うのです。
もうシンプルに、食べる機会が少ないがゆえに、ほとんどの日本人が水餃子についてよく知らない。この魅力が知られていけば、まるで昔からそうだったかのように一気に食卓に普及するのではないか…と、僕は本気でそう思っています。
昨今のブームで例えるなら、「サウナ」や「キャンプ」みたいなイメージでしょうか。
どちらも昔から、愛好家は存在していました。決して「いなかった」わけではありません。しかし一昔前の世間の反応は「へぇ、そんなのが好きなんだ」という感じ。
昔はサウナ自体も少なかったし「何度か入ったことがあるよ」くらいの経験しかない人も多かったと思います。キャンプに至っては「小学生の林間学校以来やったことがない」というのも普通で、テントで寝るといえば登山のイメージ。「焚き火や料理を楽しみながら自然の中でゆっくり過ごす」なんて、概念ごとなかったという人も多かったのではないでしょうか。
つまり多くの日本人は、サウナやキャンプについて「知識と経験が圧倒的に不足」していたのだと思います。
しかし、じわじわとその魅力に気付く人の数が増えてきて…。SNSによってその魅力が拡散されていくと、一気に普及しました。
「温泉もいいけど、サウナも好き」
「宿に泊まるのもいいけど、キャンプも好き」
現在ではそんな人もたくさんいるのではないでしょうか。
これと同じような現象が、水餃子にも起きる。
僕はそう確信しています。
『日々是餃子』でも水餃子の比較記事を掲載していますが、昨今の冷凍水餃子は本当においしいのです。水餃子ならではのもちもち・ぷるぷるした食感はうどんにも通じるところがあると思うし、日本人が好まないはずがありません。
つけだれも、焼き餃子と同じ酢醤油ベースのたれでもおいしいし、味噌だれのようなトロミのあるタイプのたれとも相性が良いので、かなりバリエーションがあります。
さらに、水餃子には「スープ餃子」という拡張性も備わっているのです。
「ご飯+おかず+汁物」で構成するときの汁物ポジションに置くこともできるし、スープ餃子自体がおかずのポジションにもなりえます。例えるなら「豚汁」に近い存在ではないでしょうか。
さらに、水餃子は茹でるだけなので調理も簡単だし、コンロの周囲が油はねで汚れることもありません。冷凍焼き餃子よりもさらに「家庭の味方」要素が強いのもポイントです。
…と、なんだか思いに任せていろいろ書いてしまいましたが、ともかく日本人はまだ水餃子を「知らないだけ」だと僕は思います。
一昔前のサウナ、一昔前のキャンプなのです。
近いうちに「水餃子ってかなりアリでは?」と気付く人が増え、そのうち「俺は焼き餃子よりも水餃子派」と宣言する人なんかも増えてきて、一定のラインを超えた瞬間に…ブームが来ます。
僕の予言として、ここに書き残しておこうと思います。